2007年04月02日

にぎやかコンサート

◇マタイ受難曲

 3月31日、錦糸町の「すみだトリフォニーホール」でバッハの「マタイ受難曲」の演奏会がありました。「マタイ」はCDでは何回か聴いていますが、生の演奏は見たことがありません。イエスとピラトの対話、怒る群集、悲しむ人たちのダイナミズム、CDだけでは汲み取れない動きを見たいと思っていたので、「あそこは、こんな感じなんだ」と分かり、曲の全体が見えてとても心に残る演奏会でした。

 同時に、こんなコンサートもあるんだと驚き、楽しくなりました。にぎやかというか、おかしいというか、そんな演奏会です。演奏が始まってから靴音高く、入ってくる人がいます。「マタイ」は音楽による壮大な叙事詩で、演奏時間は休憩を挟んで3時間を超えます。イエスとピラトの対話をはじめ、膨大な詩が流れます。演奏はドイツ語なので、20ページを超える対訳の冊子が配られました。私は老眼で、めがねをかけるのが面倒なので見ませんが、多くの人は冊子を参照しながら聴いています。1800人を収容できる大ホールに、ほぼ満員の人。その多くが同時に冊子のページをめくるので、鳥が一斉に飛び立つような音がします。寝ていても、今、演奏しているところが冊子のどこなのか迷っていても、その「ザーッ」で目が覚めたり、演奏しているところが分かったりするので、便利です。

◇パサッ

 しかし、長大な曲なので、中盤を過ぎると、お休みになる人が増えます。すると、手にした冊子が落ちる、めがねが落ちる。あちこちで「パサッ」「カシャッ」と音がします。段ボール箱を落としたような音まで聞こえました。後半になると、夕飯の支度があるか、席を立つ人がいて、靴音高く出て行く。物を落とす音は相変わらずなので、客席はだんだん緊張感が薄れてくる。すると、咳やくしゃみの音が増え、中には口を覆うこともせずに盛大に咳き込み続ける人もいます。

 最後は圧巻でした。演奏が終わって拍手が鳴り響くと、あちこちでフラッシュがたかれ始めたのです。驚きました。クラシックコンサートでは録音、撮影禁止が普通で、「すみだ」でも開演前に放送で注意を呼びかけていたはずなのに、ケータイ、デジカメがあちこちで光ります。何だかアイドル歌手のコンサートや学芸会やお稽古の発表会のようです。係りの女性が、あたふたと走り回ります。しかし、多勢に無勢。なかなか収まりません。そういえば、児童合唱団が退出するときの拍手が一番大きかったのも、学芸会やお稽古の発表会のようでした。

 と、いろいろありましたが、2000人近い人が「マタイ」をフルで聴いて、年配女性のグループが「きれいな曲でしたね」とうなずき合う様子を見ると、こんな演奏会がしばしばあるといいな、と思えました。いろんな音も驚かされたとはいえ、妙に気取ったタカビーな演奏会よりは好もしいコンサートでした。

◇お願いされても

 冊子には、「お願い」として、「演奏終了後の拍手は指揮者が指揮台から降り、客席に向かってからお願いいたします」とありました。このお願いも無視されましたが、これはお願いの方が無理だと思いました。指揮者は音が聞こえなくなってから(まだ、無音の音が鳴っている、演奏は終わっていないということかもしれないので、私の耳に聞こえなくなってから)、しばし残心を示した後、指揮台上でソリストに立つように促し、ソリストが立ってから、悠然と指揮台を降り、一呼吸思い入れを示してから客席を向きました。長っ。

 演奏に感動し、称えようという気持ちになっている人たちは待ちきれず、拍手をしています。当然だと思います。確かに、余韻も何もなく演奏が終わる以前に「ブラボー」と叫ぶ目立ちたがり、知ったかぶりが迷惑なことは確かですが、今回はそうではありません。素直な拍手です。指揮者の様子では、それがご不満のようでした。しかし、私の少ない経験でも、無音の音を聴こうと聴衆が集中し、弾き終わった演奏家が動いて初めて、みんなが我に帰って割れんばかりの拍手を送った演奏会を聴いたことがあります。とても印象に残っています。形だけの静粛を要請するのはおかしなことです。待ちきれずに拍手する聴衆の気持ちを素直に受け止め、一緒に時間を過ごせたことを指揮者も喜べばいいのにと思ったことでした。
ラベル:おたのしみ
posted by 平野秋一郎 at 15:01| 東京 🌁| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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